⑦ ㊉(まるじゅう)アートコクーン〈元金上繭倉庫〉

~製糸業のシンボルの一つ繭倉庫~

製糸工場の原料繭は購入してから繰糸までの間、貯蔵が必要です。機械製糸発足の当初は、繭は居宅の2階か土蔵に置くのが普通でした。しかし、従来の土蔵は換気が悪くカビが生じる心配がありました。また、明治18年に尾澤金左衛門宅で火災が起こり、繭を焼失し大損害を被ったことから、繭専門の倉庫を建築する動きが高まりました。昭和初年には市内合計105棟の繭倉庫が存在し、白壁土蔵造りの4・5層から6層の建物は幾百もの煙突と共にシルク岡谷の象徴となっていました。

この繭倉庫は、旧サスダイ中村甫助製糸所の繭蔵であった建物で、卸業の㈱金上が昭和32年に敷地ごと譲り受け、令和3年まで倉庫兼事務所として使用していました。間口8間、奥行5間の3階建て。白漆喰塗り仕上げの木骨土蔵造りで、切妻造りの大屋根には当初、諏訪地方特産の「鉄平石」が葺かれていました。繭の自然乾燥に適した多窓式や、3階建ての規模から明治前期の建設と推定され、繭倉庫草創期の古い形式が見て取れます。各窓には鉄の雨戸がつけられていましたが、太平洋戦争中に供出、現在は軒と木柵が独特の表情を作っています。

その後、岡谷市に現存する希少な3階建て繭倉庫の保存・活用するため、一級建築士事務所・総合建設業の㈱サイトが譲り受け、柱や梁(はり)など構造材を生かしながら構造補強をして木造2階建てに改修しました。建物がある敷地一帯を「㊉(まるじゅう)アートコクーン」と名付け、リノベーションした繭蔵にはレコード店が入っている。

外観見学OK
レコード店「CELLAR RECORDS」営業時間13:00~20:00(火・水曜定休)中は店内見学可。

住所
岡谷市本町2-5-7
駐車場
店舗東側の道路向駐車場 12台